以下は、毎日jp(3月7日)からの引用です。
「大阪市東住吉区の民家で95年、小学6年の女児(当時11歳)が焼死した事件で、大阪地裁は7日、殺人と現住建造物等放火などの罪で無期懲役が確定した母親の青木恵子(48)と内縁の夫だった朴龍晧(ぼく・たつひろ)(46)の元被告2人の請求を認め、再審を開始する決定をした。
水島和男裁判長は「放火方法に関する朴元被告の自白には科学的に不合理なところがある」と指摘した。
この事件では有力な物証がなく、朴元被告の自白調書が検察側立証の柱だった。
朴元被告は「車庫の車から約7リットルのガソリンを抜いてまき、ライターで放火した」と自白したとされ、確定判決も自白は信用できると判断した。
弁護側は1審の時から「違法な取り調べで自白調書を作成された」と主張。
再審請求に当たり、専門家が実施した実験の鑑定書などを新証拠として提出し「車庫の車からガソリンが漏れ風呂釜の種火に引火した」と主張した。
更に再審請求審で、朴元被告の自白内容に不合理な点がないかを調べるため、車庫を再現して実験した。その結果、自白通りだと、ガソリンをまいている途中に風呂釜の種火に引火するため、ライターで着火するのは不可能▽引火後2〜4秒で火の海になるため、炎をまたいでやけどもせず外へ出ることはできない−−と指摘。
自白内容は科学的に不合理で信用できないと主張した。
水島裁判長は再現実験に基づいて「確定判決の有罪認定に合理的な疑いが生じた。無罪を言い渡すべき明らかな証拠を発見した時に該当する」と判断し、再審開始を決定した。
裁判所は無罪を言い渡すべき明らかな新証拠がある場合などに再審開始を決定する。
75年の最高裁決定(白鳥決定)はその基準として、新証拠と確定裁判の証拠を総合的に評価し、事実認定に合理的な疑いが生じた場合としている。
死刑や無期懲役など重大事件の再審では、80年代に4事件で死刑確定が覆り、足利事件や布川事件が無罪となった。
また、名古屋高裁金沢支部は昨年、福井市で女子中学生が殺害された事件で再審開始を決定している。
検察側が大阪高裁に即時抗告しなければ、再審開始が確定する。
◇解説…再現実験を新証拠認定
客観証拠が乏しく、自白が立証の柱となった大阪市東住吉区の放火殺人事件。
弁護団は自白通りの放火行為が不可能と証明した再現実験を新証拠とし、再審開始に結びつけた。
実験は、現場の土間兼車庫を再現した小屋を建てて当時と同種の車や風呂釜を配置し、実際にガソリンをまいて着火する大がかりなもの。
実施に先立ち、大阪地裁の水島和男裁判長は検察側に対し、再現に必要な範囲での証拠開示と立ち会いを促した。
検察側は写真やネガを新たに開示し、当日も検察事務官が様子を見守った。
弁護団によると、既に実況見分調書などが確定審で開示されており、結果的には新たな開示証拠がなくても実験はできた。
ただ「実験後に条件設定を巡って争いになるのを防ぐ点では意味があった」(弁護団)という。
検察側は意見書で、約40年前に増改築した関係者の記憶で現場が再現されたことなどから、正確に再現されたか疑問だと指摘。
再審開始の要件である証拠の新規性・明白性を欠くとして再審請求の棄却を求めた。
地裁は「実験の再現忠実性に問題は見当たらない」として検察側の主張を退けた。
発生から相当の時間が経過している再審請求事件。
今回のケースは、証拠開示や実験の実施など裁判所の訴訟指揮がいかに重要であるかを示したといえる。
◇東住吉放火殺人事件◇
95年7月22日、大阪市東住吉区の住宅から出火し、青木元被告の長女で、当時入浴中だっためぐみさんが焼死。青木元被告と内縁関係の朴元被告が保険金目的で殺害したとして逮捕、起訴された。
2人は捜査段階で自白したが、裁判で無罪を主張。最高裁は06年、2人の上告を棄却し、無期懲役が確定。無実を訴える2人は09年に再審請求していた。」
75年の白鳥決定は↓ですが、白鳥というのは、裁判官の名前ではなく、殺害された警察官の名前です。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=51033&hanreiKbn=02
それはさて置き、ここのところ再審を含めて無罪となる事件が多いように思いますが、概ね共通しているのは、強引な自白強要と非科学的な捜査。
本当に、きちんと襟を正して頂きたいものです↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/253955132.html
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ