2012年02月27日

広島の殺人放火:母娘3人殺害、無罪確定へ 「疑い濃い」異例の言及−−最高裁上告棄却


以下は、毎日jp(2012年2月25日)からの引用です。

「広島市西区で01年、保険金目的で母と2人の娘を殺害したとして殺人や詐欺、現住建造物等放火罪などに問われ、1、2審で無罪とされた中村国治被告(41)の上告審で、最高裁第1小法廷(金築誠志(かねつきせいし)裁判長)は22日付で検察の上告を棄却する決定を出した。

小法廷は「被告が犯人である疑いは濃いが、自白内容の不自然さは否定できない」と、異例ともいえる言及をした。

無罪が確定する。

検察の死刑求刑に対し1、2審が無罪としたのは78年以降、佐賀県北方町(現武雄市)の3女性連続殺人事件(87〜89年)と、富山県高岡市の暴力団組長夫妻殺害事件(00年)の2例が確認されているが、ともに2審で確定。

検察が上告して最高裁で無罪が確定するのは初とみられる。

中村被告は01年1月、実家で実母(当時53歳)を絞殺後に放火し長女(同8歳)と次女(同6歳)を焼死させ、3人の生命保険金など約7300万円を詐取したとして起訴された。

被告と犯行を結びつける物証はなく、唯一の証拠である捜査段階での自白の信用性が争われた。

保険金目的の動機などを自白したが、公判では「警察の取り調べに迎合した」と完全否認に転じ、1審・広島地裁と2審・同高裁は信用性を否定して無罪とした。

小法廷は(1)自白内容が母の死因など客観的な証拠と一致(2)逮捕前から起訴まで自白を維持(3)妹に「極刑になる」と手紙を送っている−−などを挙げ「信用性は相当に高いという評価も可能」とした。

しかし、保険金目当てなのに契約や額について漠然とした認識しかなかったことや、放火時にまいたとされる灯油が被告の服に付着していなかったことなどを不自然として信用性を否定した2審判決の評価を「論理則、経験則に違反するとはいえない」と支持した。

横田尤孝(ともゆき)裁判官は検察幹部として事件に関与したため審理を回避し裁判官4人全員一致の意見。

◇検察幹部「無理な上告とは思えぬ」

無罪確定について、ある法務・検察幹部は「きちんとした自白を得ても裁判所がちゃんと採用しなければ、こういう『灰色』の結果になる」と批判した。

別の幹部は「放火事件は証拠が焼けてしまって自白を中心に立証するしかないケースが多い。相当の覚悟をもって上告した事件で、無理な上告とは思えない。最高裁も完全無罪と言っているわけではない」と強調した。

■解説

◇無罪推定の原則、鮮明に

「被告が犯人である疑いが濃い」とまで言及しながら1、2審の無罪判断を支持した最高裁の決定は「下級審の事実認定を心証で覆してはならない」という立場に徹した形だ。

同じ小法廷は13日、裁判員裁判で初の全面無罪となり2審が逆転有罪とした覚醒剤密輸事件を巡る判決で、「控訴審は事後審査に徹すべきだ」との初判断を示しており、無罪推定の原則を貫く姿勢を鮮明にしたといえる。

13日の判決は「控訴審は原則として1審の事実認定を尊重すべきだ」との初判断を示し再逆転無罪とした。

国民参加の裁判員裁判を意識した判決だが、今回の事件は同制度施行後に起きていれば、まさに国民が「死刑か無罪か」の究極の選択を迫られるケースだ。

「証拠に基づかず破綻している」とした2審判決に対し、検察は「健全な社会常識から被告が犯人だと優に認定できる」と異例の上告に及んだが、認められなかった。

山口県光市の母子殺害事件の第1次上告審判決が主張を認めて高裁に差し戻した後、死刑求刑事件の検察側上告は10回連続で退けられている。

検察には厳しい判断だが、死刑求刑したメンツにこだわるかのような上告を戒めたともいえる。

1審段階で十分な認定を得るための捜査・公判活動が一層求められており、捜査機関と検察がどうすればよいかという論議も急務だ。」


裁判所のホームページに、判決全文が掲載されていましたが↓、今回の事件は、必ずしも、無理矢理虚偽の自白をさせられたということではないようです。
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=82028&hanreiKbn=02

先日の裁判員裁判の逆転無罪判決↓同様、事後審に徹したという面もありますが、3人死亡している事件で、自白しているのに起訴しないという選択肢はあり得ないとしても、自白だけでは有罪にはできないのだから(憲法38条3項、刑事訴訟法319条、自白偏重になるから)、きちんと補強しなさいという最高裁のメッセージという面もあると思います。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/253199143.html

当初逮捕された児童扶養手当詐欺事件も無罪になっていますが、検察・警察としては、彼が絶対犯人だと考え、5年間彼を追い続け、児童扶養手当詐欺事件でようやく別件逮捕をしたところ、自白を得られたので、少し気が緩んだという感じでしょうか。

保険金額の認識、動機の変遷、事件当日に調べたのに灯油を扱った形跡がなかったことなどが不自然だとされていますが、検察・警察に、不自然だという意識があれば、必ずそこを詰めて来た筈ですので。

この事件で、取り調べの全過程が録音・録画されていたら↓、どうなったでしょうかね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/253955132.html

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:40| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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