2012年02月17日

君が代訴訟:起立斉唱「義務なし」確認訴訟 都教職員の敗訴確定 最高裁「懲戒前の訴えは可能」


以下は、毎日jp(2012年2月10日)からの引用です。

「学校行事で日の丸に向かい起立して君が代を斉唱するよう義務づけた東京都教委の通達は違憲として、都立学校の教職員らが義務がないことの確認などを求めた訴訟の上告審判決で、最高裁第1小法廷(宮川光治裁判長)は9日、教職員側の上告を棄却した。

教職員逆転敗訴の東京高裁判決(11年1月)が確定した。

起立斉唱の職務命令については最高裁が昨年、合憲判断を示しており、小法廷もこれに沿う判断をした。

1審・東京地裁は通達を「教育基本法が禁じる不当な支配に当たり、憲法が認める思想・良心の自由を侵した」とし、通達に従わなかった教職員に対する処分の禁止などを命じた。

これに対し2審は「憲法に反しない」と逆転敗訴としていた。

教職員側は、行政チェック機能の強化を図って04年に改正された行政事件訴訟法に基づき、将来見込まれる懲戒処分の差し止めも求めた。

小法廷は「処分後では救済が困難である場合、事前の差し止め訴訟を起こせる」と初判断。

今回の訴訟では「不起立を繰り返すと懲戒処分が累積加重され、事後的な回復が著しく困難になる」と訴えは適法と認めたが、請求自体は退けた。

桜井龍子裁判官は「個人の権利救済の実効性を高めることに重点を置いた。

訴えは適法だが、職務命令違反の内容など個別事情を立証する必要がある」との補足意見を述べた。」


裁判所のホームページにも、掲載されていました↓
http://www.courts.go.jp/search/jhsp0030?hanreiid=81982&hanreiKbn=02

訓告処分の取消請求は門前払いの訴え却下↓、懲戒処分の取消請求も請求棄却↓という結論は動かし難いにしても、例えば、懲戒処分が何回か積み重なると停職処分という運用に対しては、一応、行政事件訴訟法に基づき、事前の差し止めの訴えが可能ということなのですね。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/251353497.html
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/246865878.html

とは言え、行政事件訴訟法は、以下のとおり定めています。

(差止めの訴えの要件)
第37条の4  差止めの訴えは、一定の処分又は裁決がされることにより重大な損害を生ずるおそれがある場合に限り、提起することができる。ただし、その損害を避けるため他に適当な方法があるときは、この限りでない。
2  裁判所は、前項に規定する重大な損害を生ずるか否かを判断するに当たつては、損害の回復の困難の程度を考慮するものとし、損害の性質及び程度並びに処分又は裁決の内容及び性質をも勘案するものとする。
3  差止めの訴えは、行政庁が一定の処分又は裁決をしてはならない旨を命ずることを求めるにつき法律上の利益を有する者に限り、提起することができる。
4  前項に規定する法律上の利益の有無の判断については、第9条第2項の規定(裁判所は、処分又は裁決の相手方以外の者について前項に規定する法律上の利益の有無を判断するに当たつては、当該処分又は裁決の根拠となる法令の規定の文言のみによることなく、当該法令の趣旨及び目的並びに当該処分において考慮されるべき利益の内容及び性質を考慮するものとする。この場合において、当該法令の趣旨及び目的を考慮するに当たつては、当該法令と目的を共通にする関係法令があるときはその趣旨及び目的をも参酌するものとし、当該利益の内容及び性質を考慮するに当たつては、当該処分又は裁決がその根拠となる法令に違反してされた場合に害されることとなる利益の内容及び性質並びにこれが害される態様及び程度をも勘案するものとする。)を準用する。
5  差止めの訴えが第1項及び第3項に規定する要件に該当する場合において、その差止めの訴えに係る処分又は裁決につき、行政庁がその処分若しくは裁決をすべきでないことがその処分若しくは裁決の根拠となる法令の規定から明らかであると認められ又は行政庁がその処分若しくは裁決をすることがその裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときは、裁判所は、行政庁がその処分又は裁決をしてはならない旨を命ずる判決をする。

難解すぎて、一読しただけでは良くわかりませんが、@重大な損害を生ずるおそれがあり、かつAその損害を避けるため他に適当な方法がなく、かつB処分若しくは裁決をすべきでないことが法令の規定から明らかであるか、またはC処分若しくは裁決をすることが裁量権の範囲を超え若しくはその濫用となると認められるときとのことですので、ものすごい狭き門ですね。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:52| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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