以下は、毎日jp(2012年1月28日)からの引用です。
「性同一性障害で戸籍上の性別を変えた東大阪市の男性(29)が27日、精子の提供を受けて妻(30)との間にもうけた男児(2)の出生届を、本籍のある東京都新宿区役所に提出したが、法律上の夫婦の子である「嫡出子」として認められなかった。
夫婦は不当だとして3月をめどに東京家庭裁判所に不服を申し立てる。
男性は「夫婦の子だと書かれた戸籍を早く作ってあげたい」と話した。」
また、以下は、毎日jp(2012年1月27日)からの引用です。
法相:性別変更非嫡出子「重要な検討課題だ」
「性同一性障害で戸籍の性別を女性から変更した男性が、第三者から精子の提供を受けて妻との間に子をもうけた際、法律上の「嫡出子」と認められない問題で、小川敏夫法相は27日、閣議後の記者会見で「夫婦間の子供ではないと客観的に明らかな場合は、受理しないのが今の扱い」と述べた上で「家族制度や親子の関係、生殖医療の問題をどうするかという大変深い問題。すぐ結論を言えないが、非常に重要な問題なので検討したい」との見解を示した。
この問題では、東大阪市の会社員の男性(29)が27日午後にも本籍地の東京都新宿区役所に対し、男児(2)を法律上の夫婦の子とする出生届を出す予定。
男性は出生届が受理されなかった場合、東京家裁に不服申し立てする見通し。
また、小川法相は民法が定める非嫡出子の相続格差規定について「今すぐ法案提出の予定はないが、しっかり検討しなければいけない課題だとは思っている」と述べた。」
平成16年7月16日に施行された「性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律」↓により、性同一性障害者の方が、家庭裁判所の審判により、戸籍上の性別を変更できるようになった、すなわち、元同性の人と結婚することができるようになったことは、ご存じの方も少なくないと思います。
http://www.mhlw.go.jp/general/seido/syakai/sei32/index.html
結婚ができるのであれば、子供が欲しくなるのも、当然のなりゆきですが、元はと言えば同じ性別ですので、2人の間の子供が生まれることは、今のところあり得ません。
夫婦の元々の性別が男性であれば、第三者の女性に代理出産してもらうしかなく、この場合には、夫と代理出産した女性の間の子供として届け出た上で、養子縁組するということになるでしょう。
逆に、今回のように、夫婦の元々の性別が女性であれば、第三者の男性から精子の提供を受けて、妻が出産するということになりますが、同じく、妻と精子の提供を受けた男性の間の子供として届け出た上で、養子縁組することはできます。
しかし、この夫婦は、それでは満足できず、「実際には夫婦の間の子供ではないのに、わからずに受理しているケースだってあるじゃないか。私達も夫婦なのだから、2人の間の子供として受理しないのは不公平ではないか。」と主張しているようです。
確かに、民法には、嫡出推定と言って、婚姻中に生まれた子供は夫婦の間の子供と推定する旨の規定がありますが、夫婦の性別が生物学的には同じなのですから、夫婦の間の子供であることの推定は破られていることになります。
同じ民法が近親婚を禁じているのには、遺伝子学的な理由があるので、本当の父や母がわからない届け出を認めることは、やはり問題だと思います。
特別養子縁組↓では、駄目なのでしょうか。
http://www.courts.go.jp/saiban/syurui/kazi/kazi_06_09.html
非嫡出子の相続格差規定については、大阪高裁の違憲の判断↓も出ているのに、なぜ、「今すぐ法案提出の予定はない」ということになるのでしょうか。
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/228728580.html
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ