以下は、毎日jp(2012年1月19日)からの引用です。
「千葉県流山市で97年に会社員、田島由美さん(当時24歳)が殺害された事件で、千葉県警流山署捜査本部は18日、別の強盗事件で有罪判決を受け服役中の当時17歳だった男(32)を強盗殺人容疑で逮捕した。
「コールドケース」(長期未解決事件)を担当する県警捜査1課の専従捜査班が手口の類似した事件を調べる中で男が浮上、最新の方法で再鑑定した現場の遺留物と男のDNA型が一致した。
男は「田島さんを殺害しカードを奪ったことは間違いない」と容疑を認めているという。
◇当時17歳 DNA型一致
逮捕容疑は97年5月17日午後9時半〜同19日午前8時半の間、同市鰭ケ崎(ひれがさき)のビル3階の田島さん方で、田島さんを暴行するなどしてキャッシュカードを奪い、背中などを刃物のような物で刺し失血死させたとしている。
捜査関係者によると、男は「盗み目的で侵入したが、田島さんに携帯電話で通報されそうになり、室内にあった包丁で刺した」と話しているという。
男は当時無職で、同じ地区のアパートに母親と住み、土地勘があったという。
事件直後、現場近くの現金自動受払機(ATM)で田島さんのカードを使い現金約20万円を引き出す男が防犯カメラに記録されていた。
身長などが一致しており、捜査本部は逮捕された男とみて裏付けを進めている。
男は99年、同県柏市のマンションに共犯者とベランダから侵入、室内にいた20歳代の女性を脅迫して現金とキャッシュカードを奪った上、女性を殺害しようと室内に放火したとして、県警が強盗傷害や殺人未遂容疑などで逮捕。
有罪判決が確定し、宮城刑務所に服役していた。
県警は昨春設置した専従捜査班の捜査員を投入して50人体制で捜査を見直し、手口の類似点から男が浮上した。
99年の事件では県警は男のDNAを採取しておらず、今年1月に改めて男の口からDNAを採取し再鑑定した。
◇県警、誤認認め謝罪…被害者祖母ら逮捕後、不起訴
事件では県警が97年6月、田島さんの祖母(10年死去)と姉夫婦を殺人容疑で逮捕したが、千葉地検は97年12月、3人を「証拠が不十分」として不起訴処分にしていた。
宮内博文捜査1課長は18日の記者会見で3人の逮捕を「誤認逮捕」と認め謝罪。
姉夫婦や関係者に謝罪したことを明らかにした。
当時、県警は「祖母が犯行を自供した」とし、動機を「家族関係のトラブル」とみていた。宮内課長は「祖母の供述が捜査結果と矛盾せず、3人が関与したとする状況証拠が積み重なっていった」と経緯を説明。しかし、3人の関与を示す客観的証拠の有無を問われると「一致したものはなかった」と認めた。
客観的証拠を欠く中で誤認逮捕に至ったことについて宮内課長は「当時は自供にやや重きを置いた。DNA鑑定など客観的証拠についてももう少し踏み込んだ捜査が行われていれば違う展開もあったと思う」と捜査の過ちを認めた。」
更に、以下は、YOMIURI ONLINE(2012年1月19日)からの引用です。
「2週間信用されず「じゃ逮捕して」そして犯人に
「「だんだん犯人にさせられていった」。
1997年に千葉県流山市で女性会社員・田島由美さん(当時24歳)が刺殺された事件で、誤認逮捕された田島由美さんの義兄(42)は読売新聞の取材に当時の状況を語った。
義兄によると、家族は早期解決のため捜査に協力。
田島さんと同居していた当時80歳の祖母は足が悪かったが、県警は「面倒みますよ」と連れて行き、事情聴取を重ねたという。
そこで「自白」が生まれ、「私たちへの取り調べが厳しくなった」。
深夜に及ぶ任意聴取が約2週間続き、祖母が自白したと捜査員に言われた。
「狭い部屋で『やったんだろう』と言われ続けると、本当にやった気になってくる。『やった』と言ったほうが楽になれるとさえ思った」。
信用されず、「じゃ逮捕してくれ」と投げやりに言ったら、犯行を認めたと受け取られて捜査員が慌ただしく動き、その日のうちに殺人容疑で逮捕されたという。
逮捕後の聴取で、知らないことは説明できず、怒る捜査員に「現場に行ってないのだから説明のしようがない」と正直に言うと、「じゃあ、何で『やった』と言ったんだ」とどなられた。
その後、弁護士がついて祖母は否認に転じ、3人は釈放され、不起訴となった。
「真実がやっとわかったという安堵(あんど)もあるが、警察への不信は今もある」
田島さんの母(66)も「いつか汚名はそそがれると信じて生きてきた。ストーリーをでっちあげ、家族を誤認逮捕した警察は許せない」。
祖母はすでに他界したが、生前「私はやってない」と繰り返していたという。 」
今回逮捕された強盗殺人事件が97年、現在服役中の強盗事件が99年ですから、97年の強盗殺人事件で早期に逮捕できていれば、99年の強盗事件は未然に防げたことになります。
再審無罪事件などでも毎度のことですが、やっていないのにやったと言わざるを得なくなる過酷な取調べ。
自白を偏重し、客観的な証拠は軽視、矛盾する証拠には目をつぶり、時には証拠の改ざんにまで及ぶ体質。
謝罪しただけで解決する問題ではないと思います。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ