以下は、YOMIURI ONLINE(2011年11月16日16時03分)からの引用です。
「裁判員制度が憲法に違反するかどうかが争点となった覚醒剤密輸事件の上告審判決が16日、最高裁大法廷(裁判長・竹崎博允長官)であった。
大法廷は、「憲法上、国民の司法参加は禁じられておらず、裁判員制度は被告の権利保護にも配慮している」として同制度は合憲とする初判断を示し、被告の女の上告を棄却した。
懲役9年などとした1、2審判決が確定する。
15人の裁判官の全員一致の判決。
2009年5月にスタートした裁判員制度について、一部の法曹関係者や学者の間では、被告が裁判所による裁判を受ける権利を侵害しているなどとする違憲論も出ていた。
この事件では、フィリピン国籍の無職パークス・レメディオス・ピノ被告(45)が、マレーシアから覚醒剤約1・9キロを密輸したとして覚醒剤取締法違反(営利目的輸入)などに問われ、無罪を主張したが、1審・千葉地裁の裁判員裁判と2審・東京高裁で懲役9年、罰金400万円の判決を受けた。
控訴審から弁護側が裁判員制度を違憲だと主張していた。」
裁判所が積極的に関与してスタートした裁判員制度を、裁判所自らが違憲と判断する訳がないので、想定どおりの判決ではあるが、裁判員制度については、様々な議論がある。
すなわち、被告人にとっては、「何人も、裁判所において裁判を受ける権利を奪われない。」とする憲法32条、「すべて刑事事件においては、被告人は、公平な裁判所の迅速な公開裁判を受ける権利を有する。」とする同法37条1項、「すべて司法権は、最高裁判所及び法律の定めるところにより設置する下級裁判所に属する。特別裁判所は、これを設置することができない。すべて裁判官は、その良心に従ひ独立してその職権を行ひ、この憲法及び法律にのみ拘束される。」とする同法76条などに違反するのではないか。
裁判員にとっては、「何人も、犯罪に因る処罰の場合を除いては、その意に反する苦役に服させられない。」とする同法18条、「思想及び良心の自由は、これを侵してはならない。」とする同法19条、「一切の表現の自由は、これを保障する。」とする同法21条などに違反するのではないか。
最高裁が判断したから終わりではなく、引き続き、検証・改善のための議論は必要であろう。
札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ