2022年01月26日

民事裁判を全面IT化、提訴から判決までオンラインで…今国会にも法案提出へ


以下は、読売新聞オンライン(2022/01/25)からの引用です。

「民事裁判の全面的なIT化を実現するため、法務省は民事訴訟法などを改正する方針を固めた。

早ければ、開会中の通常国会に改正案を提出する。

提訴から判決まで、オンライン上で一連の手続きをできるようにすることが柱。

利便性の向上や裁判の迅速化などへの効果が見込まれている。

改正が実現すれば、紙の書面でのやりとりを原則としてきた民事裁判の大きな転換点となる。

法制審議会(法相の諮問機関)が近く、法改正の要綱案を決定し、2月にも法相に答申。

法務省は答申も踏まえて、法案を提出するとみられる。

改正案では、▽訴状をインターネット上で提出できるようにし、代理人となる弁護士などにはネット提出を義務化▽口頭弁論には、原告側、被告側双方が、弁護士事務所などからネットで参加する「ウェブ会議」を認める▽判決は電子データで作成し、オンラインで当事者に交付することを可能にする――といった内容が盛り込まれる見通し。

一方、弁護士をつけずに当事者が裁判に臨む「本人訴訟」については、憲法で保障される「裁判を受ける権利」の観点から、ネット提出を義務づける対象から外し、「紙」での提出が認められる。

手続きがオンライン化されても、裁判官は従来通り、裁判所の法廷内で訴訟を進める。

全国の地裁本庁では現在、法改正をせずに実施できる争点整理(非公開)などを対象に、ウェブ会議を導入。

裁判所への移動時間が不要となり、期日調整が容易になったほか、当事者が接触する機会が減って新型コロナウイルスなどの感染症対策にも有効だとの声が上がっていた。

裁判のIT化は米国や韓国などで実現しており、国際的に日本の遅れが指摘されてきた。

国内の経済界からも非効率さに批判があり、政府は2017年6月、裁判手続きのIT化を盛り込んだ「未来投資戦略」を閣議決定していた。

一方、民事裁判の訴訟記録には個人情報や企業秘密が多く含まれ、実現には情報セキュリティー対策が重要となる。

裁判所のシステム整備が必要となるため、実際に全面IT化が実現するには、法案の成立後、数年かかるとみられる。」




今でもウェブ会議は結構行われていて、確かに便利で楽ですが、弁護士大増員で、弁護士の経済的な足腰が弱っているところに、今度は、本当の足腰も弱ってしまいそうです。

一番恩恵を受けるのは、コピペで判決を書けるようになる裁判官のような気がしますが、判決も電子データで交付ということになると、我々弁護士が控訴理由書を作成するのも、コピペが多用できますので、控訴率とかが高くなったりするかも知れません。

まあ、私は、昔から、スキャンしてOCRしてますけど。

posted by 森越 壮史郎 at 15:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする

2022年01月24日

DNA型データ抹消命じる 無罪確定後も警察保管 「必要性示されず」と地裁


以下は、共同通信(2022年01月19日)からの引用です。

「マンション建設の反対運動中、現場責任者に暴行したとして逮捕、起訴され、その後無罪が確定した名古屋市瑞穂区の薬剤師奥田恭正(おくだ・やすまさ)さん(65)が、警察が保管しているDNA型や指紋、顔写真などのデータの抹消を国に求めた訴訟の判決で、名古屋地裁は18日「保管すべき必要性は示されていない」として3種類のデータの抹消を命じた。

代理人弁護士は「無罪確定後に抹消を命じる判決は初めてではないか」としている。

捜査上のDNA型データ保管は国家公安委員会規則などで運用されているのが現状で、識者からは法整備の必要性を指摘する声が出ている。

奥田さんは違法捜査で精神的苦痛を受けたとして、国と県に損害賠償も求めていたが、地裁は棄却した。

西村修(にしむら・おさむ)裁判長は判決理由で、無罪が確定した人のDNA型などのデータを継続的に保管する場合、余罪の存在や再犯の恐れなど具体的な必要性が示されるべきだと指摘。

「身体拘束の根拠となっていた被疑事実が審理の結果、否定され、確定した以上、それ以降の継続的保管の根拠が薄弱になると言わざるを得ない」と述べた。

その上で奥田さんについて、余罪や再犯の可能性を認めるのは困難で「データを保管すべき具体的必要性は示されていない」と結論付けた。

一方で、DNA型や指紋のデータベース化で「科学的捜査が可能となり、捜査の効率性、実効性が高まる」との判断も示した。

国側は国家公安委員会の規則に基づきデータを管理、運用していると主張していた。

判決後、奥田さんは「支援してくれた皆さまに感謝したい」と話した。

警察庁は「判決内容を精査して、今後の対応について検討していきたい」とコメントした。

判決などによると、奥田さんは2016年10月7日、自宅近くのマンション工事現場で、現場責任者の男性を突き飛ばしたとして、愛知県警に暴行容疑で現行犯逮捕された。DNAや指紋を採取された。

地裁は18年2月、「被害男性の証言を全面的には信用できない」として無罪を言い渡し、その後判決が確定した。

※DNA型記録取扱規則

DNA型情報を登録したデータベースの運用方法を定めた国家公安委員会規則で、2005年9月に施行。

運用の目的を「犯罪捜査」に限定し、対象者の死亡時か「保管する必要がなくなったとき」には、データを抹消しなければならないと定めている。

警察庁の犯罪鑑識官は、情報の漏えい防止のために必要な措置を講じなければならないとしている。」






裁判所のホームページには、掲載されないようですね↓

DNA型記録取扱規則は↓

判決文が読めないので、推測になりますが、その7条1項で、1号の「被疑者DNA型記録に係る者が死亡したとき」に続けて、「前号に掲げるもののほか、被疑者DNA型記録を保管する必要がなくなったとき」には、当該被疑者DNA型記録を抹消しなければならないと定められているのを、「わざわざ1号で死亡を明記した上で、2号でその他としているのだから、死亡に比肩する程、保管する必要がなくなったとき」と解釈するのか(国側)、「1号の死亡は当然のことを記載しただけで、特に意味はなく、具体的な保管の必要性がなくなったとき」と解釈するのか(男性側、判決)という問題でしょうね。

恐らく、最高裁まで行くことになり、最終的な結論が出るまでに、まだ何年もかかるのだとは思いますが、他の報道によると、諸外国では、きちんと法律で定められている様ですので、識者ではない私でも、単なる規則で、しかもこんなに漠然とした定めではなく、きちんと法律で具体的に定めるべきだとは思います。

posted by 森越 壮史郎 at 17:43| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする