2013年06月18日

未成年者の両親につき、指導監督義務に基づく不法行為責任が否定された事例


未成年者の不始末は、全て親の責任、全て親が全額支払って当然、と思っている方も多いのではないかと思いますが、法律的には、そうではありません。

例えば、先日読んだ判例タイムズという判例雑誌の1387巻257頁に、未成年者が自転車を運転中歩行者と衝突し、転倒・負傷させた交通事故につき、当該未成年者の不法行為責任は認めたものの、未成年者の両親につき、指導監督義務に基づく不法行為責任が否定された大阪高等裁判所平成23年8月26日判決が掲載されていました。

裁判所の感覚では、先例的価値に乏しいということなのか、裁判所のホームページには、掲載されていません。

事案の概要は、「Xは、自宅周辺の路上で佇立していたところ、Y1の運転する自転車と衝突して転倒した。Xは、Y1につき自転車運転上の過失、その両親であるY2及びY3につきY1に対する安全運転に関する指導監督義務違反の過失をそれぞれ根拠に、いずれも民法709条に基づき損害賠償を請求した。」というものです。

これに対する判決は、「本件事故当時、Y1は、中学2年生(14歳)であり、XはY1の体が大きいので、Y1を大学生と間違えた程であるところ、Y1は、その1年数ヶ月後に高等学校に進学しており、心身ともに平均以上の成長を見せていたものであることが認められる。したがって、Y1の責任能力が優に認められる。本件事故は、Y1の重大な過失によるものではあるが、所詮は、Y1が、本件事故当時、非常に危険で無謀な自転車の運転方法をしていたというに留まる。そして、Y2及びY3から見て、本件事故当時、Y1が、(1)社会通念上許されない程度の危険行為を行っていることを知り、又は容易に知ることができたことや、(2)他人に損害を負わせる違法行為を行ったことを知り、そのような行為を繰り返すおそれが予想可能であることについて、Xは、具体的な主張、立証をしていない。したがって、Y2及びY3について、Y1の自転車運転に関する危険防止のための具体的な指導監督義務を認めることができないから、本件事故の発生について、Y2及びY3の責任は認められない。」というものです。

民法712条は、「未成年者は、他人に損害を加えた場合において、自己の行為の責任を弁識するに足りる知能を備えていなかったときは、その行為について賠償の責任を負わない。」と定める一方で、民法714条で、「前2条の規定により責任無能力者がその責任を負わない場合において、その責任無能力者を監督する法定の義務を負う者は、その責任無能力者が第三者に加えた損害を賠償する責任を負う。ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」と定めています。

「自己の行為の責任を弁識するに足りる知能」の有無は、一概に、年齢だけでは決められませんが、小学校を卒業する12歳位が、1つの目安と言われています。

ですので、本件のように中学校2年生というケースでは、民法714条の監督義務者責任を問うという訳には行かないのが、普通です。

そこで、一般的な不法行為である民法709条により、「安全運転に関する指導監督義務違反の過失」を根拠に、両親に対しても、損害賠償を請求した訳ですが、上記の「ただし、監督義務者がその義務を怠らなかったとき、又はその義務を怠らなくても損害が生ずべきであったときは、この限りでない。」という主張・立証責任の転換はないので、両親の具体的な過失を主張・立証しなければならないことになります。

ところが、「Xは、具体的な主張、立証をしていない。」ので、当然、「Y2及びY3について、Y1の自転車運転に関する危険防止のための具体的な指導監督義務を認めることができないから、本件事故の発生について、Y2及びY3の責任は認められない。」という結論になる訳です。

本人だけを訴えても、両親も合わせて訴えても、印紙代は変わりませんので、恐らく、裁判の過程で、何か有力な証拠が出てこないものかとの思いから、両親も合わせて、訴えてみたのではないかと思います。

逆に、加害者本人が、未成年ではなく、成人であっても、先日のてんかん発作によるクレーン車暴走事件のように、具体的な過失が立証できれば、責任が認められる訳です↓
http://morikoshisoshiro.seesaa.net/article/358121928.html

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 15:37| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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