2013年06月17日

地検、被害者の住所伝える 川崎、強制わいせつ被告に


以下は、朝日新聞デジタル(2013年6月14日) からの引用です。

「強制わいせつ事件で被害を受けた川崎市内の30代女性の住所や電話番号が、横浜地検川崎支部から被告の男に伝わっていたことが分かった。

不安を感じた女性は7月にも家族で引っ越す予定で、その費用や慰謝料などを求める国家賠償訴訟を起こす準備をしている。

捜査機関の不手際で加害者に被害者の個人情報が漏れる事態はほかにもあり、被害者情報の保護の徹底が図られてきたが、また不手際が明るみに出た。

女性の代理人を務める湯山薫弁護士によると、男(82)は川崎市内の自宅にホームヘルパーとして派遣されてきた女性に抱きつくなどしたとして強制わいせつの罪で起訴された。

横浜地裁川崎支部で今年3月、懲役2年6カ月の実刑判決を受けて控訴している。」




以下は、同じく、朝日新聞デジタル(2013年6月14日) からの引用です。

住所知られ不安の毎日 性犯罪被害女性、検事の言葉にも傷つく

「検察が性犯罪の被害女性の住所を加害者に知らせるミスをしていた。

女性は不安を訴えても「拘置所に入っているから大丈夫でしょう」などと検事に言われ、二重に傷ついたという。

おびえながら毎日を過ごす女性が、朝日新聞に検察への憤りを語った。

5月下旬。

強制わいせつ罪で起訴され、一審で有罪判決を受けた被告の男の弁護人から突然、女性のもとに手紙が届いた。

被告が謝罪の手紙を送りたい意向であることや、示談を打診する内容がつづられていた。

女性は横浜地検川崎支部の検事から「被告や弁護人から直接、連絡がいくことはない」と言われていた。

「被告が黙秘をしているから、何とか証言してもらえないか」と説得され、証人尋問にも応じた。

「危険はない」という約束だった。

被告は拘置所にいても、外に出る同房の人間に頼んで危害を加えてくるかも知れない。

知られた住所に住んではいられない。

夫と子ども2人とともに、7月以降に引っ越すことにした。

小学生の長女も転校させなければならない。

だが、その理由さえ話せない。

「何も悪いことをしていない私たちが追い出される。なぜ、こんな怖い思いをしないといけないのか」

控訴審を担当する東京高検の女性検事の言葉にも傷ついた。

「引っ越し費用を(示談金に)上乗せして請求したらどうか」と言われた。

女性は「まるで被告の弁護人のようで信用できない。あなたに事件を担当してほしくない」と検事に告げた。

昨年11月に神奈川県逗子市で起きたストーカー殺人事件の報道に、夫婦で「こんな風になったら嫌だね」と話していた。

自分も捜査機関に危険にさらされるとは思ってもみなかった。

女性は「何人被害者が出れば分かるのだろう。怠慢な仕事が、ここまで人の人生を狂わせている」と話した。

■うっかりでは済まされない

<諸沢英道・常磐大大学院教授(被害者学)の話>

被害者の住所など個人情報に配慮しなければならないことは、一般の人にも広く知れ渡っている。

当事者には一生にかかわる話だが、捜査機関の担当者は流れ作業の一つとしか思っていないのではないか。

「うっかり」というレベルでは済まされず、倫理的な責任が問われる。

被害者は怒りをぶつける先がない。

司法に関わるすべての人が高い意識を持つための教育が求められる。

■一連の経緯

<2012年>

3月
女性が被害に遭う

7月
横浜地検川崎支部が男を強制わいせつ罪で起訴。
横浜地裁川崎支部が被害者の住所や電話番号などを公判では明らかにしないと決定。
地検川崎支部から女性に、男や弁護人には個人情報を開示しない通知が届く 。

10〜12月
公判中に地検川崎支部から男の弁護人に、被害者の住所が書かれた書類が郵送される。
書類は弁護人から拘置所内の被告に渡る。

<2013年>

3月
男に地裁川崎支部が懲役2年6カ月の実刑判決。
その後、男は控訴。

5月
男の控訴審の弁護人から女性に手紙が届く。

6月
地検川崎支部が女性に謝罪。」




以下も、同じく、朝日新聞デジタル(2013年6月14日) からの引用です。

被害者住所、裁判所からも被告側に 横浜地検改めて謝罪

「強制わいせつ事件の被害に遭った女性の住所や電話番号が横浜地検川崎支部から弁護人と被告に伝わっていた問題で、横浜地検は14日、報道機関に経緯を説明した。

中村周司次席検事は、被告の裁判で実施された女性の証人尋問の内容を横浜地裁川崎支部がまとめた調書にも、女性の住所が書かれていたことを明らかにした。

この調書も、地裁支部から弁護人に渡っていたという。

中村次席検事は、地検支部から住所と電話番号が漏れたことについては「被害者に迷惑をかけ、誠に申し訳ない。今後はこのようなことがないよう指導したい」と改めて謝罪。

検事が急いでいて住所などを塗りつぶすのを忘れたのが原因で、今後は複数の目でチェックを徹底するという。

被害者は川崎市内に住む30代のホームヘルパーの女性。

強制わいせつ罪で起訴された男(82)の裁判で、地検支部が証拠として弁護人に開示した捜査報告書に、女性の住所と電話番号が記されていた。

地検支部は住所などの秘密は守ると女性に約束していた。

男は地裁支部で実刑判決を受けて控訴。

今年5月、女性に控訴審の弁護人から示談を求める手紙が届き、住所が漏れたことが発覚した。

女性は引っ越しを余儀なくされ、その費用や慰謝料などを求める国家賠償訴訟を起こす準備をしている。 」




以下は、毎日jp(2013年06月15日)からの引用です。

<被害者情報漏えい>女性側が国賠提訴へ 事件の公判巡り

強制わいせつ事件の公判を巡り、被害女性の個人情報を横浜地検川崎支部が誤って被告側に伝えていた問題で、女性の代理人の湯山薫弁護士が14日、神奈川県小田原市内で記者会見し、7月にも国家賠償訴訟を起こす意向を示した。

横浜地裁川崎支部が作成した証人尋問調書にも女性の住所などが記され、その写しが被告側に渡ったことも明らかにした。

湯山弁護士によると、川崎市の30代の被害女性は今年5月、強制わいせつ罪で控訴審中の男性被告(82)の弁護人から示談を求める手紙が届いて以降、体調を崩している。

身の危険を感じ、夫や娘2人と7月中にも引っ越す予定で、訴訟ではその費用や慰謝料を求めるという。

被告の1審公判で、女性は地検支部の要請により「名前と年齢以外の個人情報を被告側に明かさない」との条件で証人尋問に臨んだ。

地裁支部は法廷で女性の住所も名前も明らかにしない決定をしたが、書記官が作成した証人尋問調書には住所などが記され、被告側に写しが渡っていた。

横浜地裁によると、制度上、裁判所が作成する証人尋問調書には、住所や名前などが記載されるのが一般的で、弁護人のコピーにも制限はない。

ただ地裁支部は昨年10月、コピーした被告の弁護人に「住所を被告には伝えないでほしい」と要望したという。

湯山弁護士は「尋問調書で住所を伏せる法的根拠がないとしても、秘匿決定をした裁判所の対応としては疑問を感じる。この点も訴訟で問題提起したい」と述べ、地検支部、地裁支部両方の行為について責任を問う構え。

横浜地裁は「結果的に女性が不安な思いをしていることについては真摯(しんし)に受け止めたい」とコメントした。

横浜地検の中村周司次席検事は14日記者会見し「被害者に迷惑をかけ、誠に申し訳ない」と謝罪した。」




以下のとおり、平成19年6月に成立した「犯罪被害者等の権利利益の保護を図るための刑事訴訟法の一部を改正する法律」により、本件のような性犯罪などの一定の事件については、裁判所が名前や住所など被害者を特定させることとなる事項(被害者特定事項)について、非公開とする旨の決定を行うことができることが、明文で規定されました。

刑事訴訟法290条の2
「裁判所は、次に掲げる事件を取り扱う場合において、当該事件の被害者等(被害者又は被害者が死亡した場合若しくはその心身に重大な故障がある場合におけるその配偶者、直系の親族若しくは兄弟姉妹をいう。以下同じ。)若しくは当該被害者の法定代理人又はこれらの者から委託を受けた弁護士から申出があるときは、被告人又は弁護人の意見を聴き、相当と認めるときは、被害者特定事項(氏名及び住所その他の当該事件の被害者を特定させることとなる事項をいう。以下同じ。)を公開の法廷で明らかにしない旨の決定をすることができる。」

しかし、これは、飽くまで、どこの誰が性犯罪などの被害者になったかということを、「公開の法廷で明らかにしない」ことによって、世間一般に、誰が性犯罪などの被害に遭ったのかを知られないようにするための制度であって、被告人に対してまで、明らかにしないという訳ではありません。

上記条文に続く刑事訴訟法291条2項には、上記の非公開の決定がされた場合の起訴状の朗読について、「起訴状の朗読は、被害者特定事項を明らかにしない方法でこれを行うものとする。この場合においては、検察官は、被告人に起訴状を示さなければならない。」と定めているところで、敢えて、被告人に示すことが義務付けられている起訴状に、被害者特定事項の記載がないのであれば、示す意味はありませんし。

でも、「地検川崎支部から女性に、男や弁護人には個人情報を開示しない通知が届いた。」とのことですので、更に特別な措置があるということなのでしょうか。




と思っていたら、以下は、同じく毎日jp(2013年06月15日)からの引用です。

被害者保護:性犯罪 匿名で起訴状 最高検が各地検に要請

性犯罪やストーカー事件の被害者保護の一環として、検察当局が今年に入り、被害者の氏名を伏せた起訴状を作成し、容疑者を起訴していたことが分かった。

刑事訴訟法は、犯罪の内容をできるだけ特定して起訴状に記すよう定めており、匿名化は極めて異例。

起訴状は必ず被告に送られるため、被害者の個人情報が知られれば再被害の恐れがあるとして、最高検が記載内容を工夫するよう各地検に求めたことを受けた措置とみられる。

関係者によると、匿名の起訴状を作成したのは関東地方の地検。

携帯電話のメールを通じて知り合った女性にわいせつ行為をしたとされる男の起訴状で、女性の氏名を伏せ「携帯のメールアドレスが○○@○○〇〇だった女性」と記した。

起訴前に女性の意向も確認し、女性は既にアドレスを変更したという。

昨年11月に神奈川県逗子市であったストーカー殺人事件を巡っては、警察官が逮捕状に書かれた被害女性の結婚後の姓や住所を読み上げたため住所特定につながった可能性があるとされた。

警察庁は昨年12月、再被害の恐れがある場合は逮捕状で実名を避けるよう通達した。

だが、起訴状は実名が原則のままで、被害者側から改善を求める声が出ていた。

これを受け最高検は、全国の地検幹部を集めた会議で、氏名などを起訴状に書かなくても被害者を特定する方法の検討を求めた。

現場では試行錯誤が続く。

神戸地検姫路支部は昨年末、電車内で女性につきまとったとしてストーカー規制法違反などで男を起訴した際、女性の氏名をカタカナで表記。

検察側は当初、年齢だけ記したが、車内に同年齢の女性がいた場合、被害者を特定できず、裁判所が修正を求めたとみられる。

別の地検では、被害女性の旧姓を記載したケースもあった。

被告が結婚後の姓を知らなかったことを考慮したという。

被告が自分を守る権利(防御権)を踏まえ、ある裁判官は「被害者とされる相手も分からない中で被告に『反論せよ』というのは酷だ」と指摘する。

一方、検察幹部は「一律に匿名化するわけではない。工夫次第で被害者保護と被告の防御権確保は両立できる。裁判所には理解を求めていく」と話している。




起訴状の記載すべき公訴事実は、「できる限り…事実を特定」しなければならないものとされていますので(同256条)、検察官の裁量で、わかっているのに伏せても良いというのは、やはり違和感がありますね。

上記のとおり、被害者特定事項を公開の法廷で明らかにしないことですら、明文の定めがあり、かつ、裁判所の決定があって、初めてできることになっている訳ですし。

「地検支部、地裁支部両方の行為について責任を問う構え。」とのことですが、被告人の弁護人の行為についても合わせて責任を問うことによって、被告人の防御権についての議論も深め、法改正へつなげて行くことができれば良いのではないかと思います。

札幌弁護士会所属弁護士森越壮史郎法律事務所ホームページ
posted by 森越 壮史郎 at 12:38| Comment(0) | TrackBack(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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